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下がり続けるトルコリラ、それを薦める日本FX会社

トルコの憲法改正を問う国民選挙でエルドアン独裁が強まる

2017年4月17日、トルコにおいて同国の将来に大きな影響を与える憲法改正を問う国民選挙が行われました。内容はほぼエルドアン現大統領の都合の良いシナリオ通りに進み、これまでの議院内閣制から大統領制に移行する制度改革、首相職の廃止、大統領が閣僚の任命や非常事態令の発令の権限のほか司法にも影響力をもつようになるなど、エルドアン大統領に絶大な権力が集約することになりました。

 

2月10日、トルコ大統領府は、現在は象徴的な地位にある大統領に行政の権限を集中させる憲法改正案をエルドアン大統領(写真)が承認したと発表した。1月にアンカラで撮影(2017年 ロイター/Umit Bektas)

 

FX会社はトルコリラのレバレッジを制限→解除

この憲法改正を問う国民選挙はトルコの将来に大きな影響を与え、場合によっては過激派による事件も予想されていたため各FX会社はトルコリラ取引に対するレバレッジを制限し、リスクを避ける方法に出ました。国民選挙が終わったあとは通常通りに戻っています。

 

収まらないトルコリスク

しかし数年前から始まっている中東の混乱におけるトルコのリスクはこのところ収まるところを知りません。弱体化したとはいえトルコはイスラム国と戦う最前線の国の一つであり、シリア内戦に伴う米国とロシアの対立、欧米が後押ししていたクルド人との対立、シリアからの難民などの問題が山積みになっています。

さらにシリア内戦に本格的にロシアと米国が介入してきたことでさらに問題は悪化、解決の糸口すら見えていません。

ここ数年では直接トルコ国内の首都アンカラやイスタンブールなどでテロが相次ぎ、2016年にはなんと軍によるクーデターが勃発しました。不安要素は年を経る頃に減るどころか増える一方です。

 

外務省の情報では国の3分の1が危険地域

外務省の海外安全ページ(https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_052.html#ad-image-0)においてはトルコは危険と判別されており、国の東側にはレベル1からレベル4の危険地域にあんっています。首都のアンカラや経済都市イスタンブールにもレベル1の注意喚起が出ており、はっきりいって安全ではない国になっています。

安全ではない国にどれだけの人が行って、どれだけの人がビジネスをしようと思うでしょうか。もちろん今のトルコに行ったりする人はいますが、絶対数は多くありません。多くの人・モノ・カネが入ってこなければ、大きな経済成長は見込めません。

 

 

下がり続けるトルコリラ。USDTRYも上昇しっぱなし

そのトルコで流通しているトルコリラですが価値がどんどん下がり続けています。ちょうど2年ほど前にTRYの下落について記事にしましたが、当時はUSDTRYが3.0000を突破しました。現在のUSDTRYは3.6600とさらに20%以上も対USDでレートが下がり続けています。これはゴールドマンサックスの2年前の予想に合致しています。

https://kothey.com/column/%e7%9b%b8%e5%a0%b4%e3%81%8c%e8%90%bd%e3%81%a1%e7%9d%80%e3%81%84%e3%81%9frub%e3%81%a8%e4%b8%8b%e3%81%8c%e3%82%8a%e7%b6%9a%e3%81%91%e3%82%8btry.html

ゴールドマン・サックスはト ルコリラが急落領域に入ったと指摘しました。12ヶ月以内にトルコリラの対ドル相場が現行水準より約20%安い3.6まで下落すると予想しました。ただ、2017年には相場が落ち着くとしています。ゴールドマン・サックスはまた、トルコの中央銀行の政策金利が、来年は12%、2017年には14%まで引き上げられるとの見通しを示しました。

 

USDTRYのここ2年のチャート

 

トルコリラが持ち直すのは歴史的背景から考えづらい

対円においてもトルコリラは30円を割ってしまっています。2007年頃のリーマンショック前ではトルコリラ/円は90円を超えていました。そこからわずか10年で価値が3分の1になってしまっていたのです。途中大幅な円高局面はあったものの、ドル円、ユーロ円、豪ドル円などの先進国通貨は元の水準に戻ってきているので、いかにトルコリラがその価値を減少させてきたか分かります。

 

 

トルコは歴史的にインフレが激しく、通貨の下落は規定事項

そもそもトルコは歴史的にインフレが激しい国であり、過去には年間6000%のハイパーインフレになったこともあります。金利が高いのはインフレの裏返しでもあり、何度もインフレ抑制のために超高金利をつけていました。しかしそれでも抑えることはできず、通貨切り下げのデノミネーションをも何度もやっています。当たり前ですが、インフレになればなるほど相対的に通貨の価値は下落します。ここ10年も同じ結果でした。

 

インフレと政情不安で通貨の上昇はほとんど見込めない

さらに今のトルコはシリア内戦、イスラム国、テロリズム、クルド人問題といった数々の政情不安材料を抱えています。ついこの前もイスタンブールでロシアの大使が射殺されるというテロが起こったり、2016年には軍によるクーデターが起こっています。いずれもエルドアン体制を覆すものではなかったものとはいえ、トルコのリスクが如実に現れています。

インフレ(経済不安)・政情不安、この2大リスクを抱えた国が大きく発展したケースは歴史上存在しません。どんな国であれ政治が安定して政情不安が無くなってから、順調な経済成長ができるのです。日本や韓国、東南アジア、中国などの急激な経済成長も政治が安定してからのことです。

エルドアン大統領が強権を発動し政治的に安定するという可能性も残っていますが、政情不安の大半は隣国事情である上に、国内のインフレや経済不安などのリスクによってこれからトルコがV字回復をとげてトルコリラが大幅にその値を上げることはかなり考えにくいと予測できます。そう、トルコリラへの投資はハッキリいってオススメできないのです

 

トルコリラへの投資を無茶苦茶薦める日本のFX会社

上記のように様々なリスク要因を抱えているトルコを鑑みれば、トルコリラへの投資をオススメできないことがわかります。無論、めちゃくちゃ下がっていますので今が歴史的な底値圏で買い場であるという見方もできますが、そういってこの10年ずっと下げ続けてきました。買い場どころか全部売り場だったのです。なんか数年前に「ここが歴史的な買い場だ」とうたってイラクディナールを売ってた人を思い出します。

しかし日本のFX会社は多くのところがトルコリラを取扱い、トルコリラの魅力を紹介して投資を薦めるかのような表記をしています。直接的な投資の推薦は法律上の問題があるためできないものの、トルコリラ取扱FX会社のホームページには、トルコへの投資のメリットが何点も書かれています。主に高金利であること、スワップポイントが高いことです。要するに 「買うことによって得られるメリット」 のみです。

 

リスクが書かれていないセントラル短資FX

セントラル短資FXはトルコリラのスワップポイントや取引のスプレッドの小ささを強調、トルコのリスクについては触れられていません。スワップポイントのことだけが書かれており、トルコリラは買うものであるという印象を強く受けます。

 

アフィリエイトサイト顔負けのトルコリラよいしょのFXプライム

FXプライムbyGMOもトルコリラのリスクについては触れていません。それどころかアフィリエイトサイト顔負けのトルコリラよいしょページが作られています。トルコリラがいかに高金利通貨であるか、いかに高いスワップポイントがつくかのメリットばかりが強調されてます。同じ高金利通貨である豪ドルやNZドル、南アフリカランドとのスワップポイントの比較や、年間を通して豪ドル円とトルコリラ円のスワップポイントの差がこれほどあると強調しています。

トルコリラにはインフレリスクや政治・経済・地政学的リスクがあることや通貨として安定していないこと、豪ドル、NZドルはメジャー通貨で通貨として安定していることなどが比較されておらず、どこからどこまでもスワップポイントだけです。

 

レポートがあるマネースクウェアジャパンが凄くマシに見える

その中でもマシなところは「マネースクウェアジャパン」です。ここは以前からアナリストレポートなどが高評価を得ており、トルコリラの下落に対しても冷静なレポートが出されています。会員限定ではあるものの、今回の国民選挙についても迅速にレポートが出されており、他業者と比べるときちんとしています。他の業者ではトルコのリスクを知られたくないためか、こういったリスク要因のレポートを出さないところが多数です。

 

 

どこもかしこも高金利とスワップポイントのことばかり

これら日本FX会社のトルコリラページに共通するのが高金利、スワップポイントの高さといった「買い」での目線のみで書かれていることです。もともとFXは株とは違って売りでも利益を取れることがメリットの1つであり、特にトルコリラのような通貨価値が減少する可能性が高ければ、売りでこそ狙うチャンスがあるものです。なぜ、売りで利益が取れることを書かないのでしょうか。なんだかどうしてもトルコリラを ”買って欲しい” 都合があるように感じます

 

エキゾチック高金利通貨のスワップ運用は破綻する

そもそも南アフリカランドやトルコリラ、アイスランドクローネ、ハンガリーフォリントのようなエキゾチックに分類されるリスクの高い通貨で、安定して高金利を得られるような表記にしている事自体が問題です。こういったエキゾチック通貨はインフレ要因や流動性のリスクをかかえており、基本的に年を経るごとに通貨価値が減少していくものです。投資すれば金利以上に損をする可能性が高い投資なのです。実際に高金利スワップ運用をやっている人で成功しているのは、ほとんどがメジャー通貨である豪ドル、NZドル運用の人だけです。エキゾチック通貨スワップ運用はほぼ確実に破綻します

アイスランドクローネはトルコリラと同じく3分の1になりましたし、ハンガリーフォリントも2分の1になっています。南アフリカランドもどんどん下がっており、時折とんでもない下落が起こります。値が飛んでしまうほどの下落で、そのたびに南アフリカランドのスワップ運用をしていた方のロスカットの嘆きがあちらこちらで聞かれます。

上記ブログにはトルコリラの運用ブログが少ない理由について、ダイレクトに「スワップ運用して消えた」と結論付けています。まったくもってそのとおりであり、トルコリラを買ってスワップ運用している人で成功している人は皆無といっていいぐらいです。なにせ通貨の価値が3分の1になってしまうのですから、単純計算でレバレッジ1.5倍でも破綻することになります。

 

疑惑:日本のFX会社は高金利通貨を買って負けてほしいのでは?

ここからは私の完全な妄想ですが、日本のFX会社の狙いはトレーダーにリスクの高い高金利通貨を買ってもらって負けてほしいのではないかという疑惑を持っています。この推測には日本のFX会社のDD方式があります。

以前から何度も書いていますが、日本のFX会社の多くが導入しているDD方式は投資家が勝つとFX会社が負け、投資家が負けるとFX会社が勝つ、利益相反関係になります。これはハッキリいえばFX会社にとっては「客:トレーダーには負けてほしい」わけであり、中にはあくどい ”ストップ狩り” というレート操作を行って客の逆指値を巻き込んで利益を上げるようなことがまかり通ってしまいます。しかしあまりにも悪質なことをやり過ぎたために金融庁も動いて幾つかの業者には行政処分が降ったため、ストップ刈りでは容易に客を負けさせられなくなったはずです。

 

高金利通貨を買わせれば、トレーダーは負けてくれる?

そこで目をつけたのが高金利通貨です。高金利通貨はその言葉通り、高金利が魅力なのでそれを強調しておけば多くのトレーダーが ”買って” くれます。しかしエキゾチック通貨である南アフリカランドやトルコリラは確実に年々下落している通貨です。トレーダーも負けじとナンピン買いをしていきますが、どこかで限界が来て大きく負けます

ナンピンをすればするほど負けが大きくなります。

業者がその注文を呑んでいれば「トレーダーの強制ロスカット=業者の儲け」となり、大きな利益を上げることができます。呑んでいなかったとしても、強制ロスカットによる逆指値はすべることが当然であり、さらに流動性の悪いエキゾチック通貨なら相当スリッページさせようがわかりません。なにせエキゾチック通貨の下落というのは値が飛んでしまうのですから。業者のいいようにスリッページできます。文句を言われても ”流動性が悪い通貨だから” で説明は終わりです。

 

ただの推測だよ。証拠もなにもないよ。でもトルコリラ買いたいですか?

日本FX会社が、投資魅力に乏しく値下がりリスクが大きなトルコリラへの ”買い” の投資をこれでもかと薦めているのには、そんな理由があるのではないかと思います。もちろん私の推測でしかなく、何も証拠はありません。ですが、これだけリスクがあって、年々確実に下落しているトルコリラを、そのリスクを全く説明しないFX会社でまだ買うのはオススメできません。まだ買いたいでしょうか。自己責任でどうぞ。

 

 

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